ブラキシズムについて
ブラキシズムとは?
ブラキシズムという言葉をお聞きになったことはありますか?あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、「ブラキシズム」とは歯科で使われる専門用語で、奥歯やその周辺の器官にみられる習慣的なストレス回避行動のひとつです。
代表的なブラキシズムについて
代表的なブラキシズムには、歯ぎしり、噛みしめ(食いしばり)があります。歯ぎしりは睡眠中に行っています。
ですから、自覚することは少なく、周囲の人に知らされて初めて気づくことがほとんどです。一方、噛みしめは、日中・夜間にかかわらず、無意識のうちに歯を食いしばってしまうものです。これらを総称してブラキシズムといいます。
あなたはどの症状?ブラキシズムチェックでタイプが分かる
あなたは歯ぎしりや咬みしめをしていませんか?実際はやっていても気づいていない方が大半です。鏡を見ながらチェックしてみましょう。以下の該当項目をカウントしてください。最後に自分のタイプが判断できます。
【レッドゾーン診断】
ここで3つ以上当てはまる方はほぼブラキシズムがあるとみて良いでしょう。
- ①歯ぎしりをしていると言われたことがある
- ②集中しているとき、緊張しているときなど、無意識のうちに噛みしめていることが多い
- ③歯科医院で「歯ぎしりや噛みしめをしていませんか?」と聞かれたことがある
- ④歯が割れた(折れた)ことがある(事故、ケガをのぞく)
- ⑤頬の内側の粘膜や、舌の周辺に歯の跡がついている
- ⑥歯がかなりすり減っている
- ⑦肩こりがひどい
- ⑧頭痛がすることが多い
- ⑨アゴを開けると音がなる
- ⑩アゴを開ける、かむときに痛みがある
- ⑪口があかない
【イエローゾーン診断】
前項のレッドゾーンのチェック項目で該当する項目が1つ以上あり、このイエローゾーンにもあてはまる項目が3つ以上ある場合、「ブラキシズムの可能性が高い」といえるでしょう。
- ⑫詰め物がたびたび外れる
- ⑬犬歯やその前後の歯の先端が極端にすり減っている
- ⑭朝起きたときに、口の周囲にこわばりがある
- ⑮歯ぐきが硬く隆起しているところがある
- ⑯歯の付け根がえぐれている
- ⑰むし歯でもないのに、しみることがある(知覚過敏)
- ⑱アゴの関節に痛みがあったり、カクカク音がなる
- ⑲エラがはっている
- ⑳ストレスがたまりやすい
- ㉑起床時アゴがこわばる、疲れている
- ㉒歯の中心が顔の中心からずれている
▼ブラキシズムチェックで判定されたタイプ別にあなたのタイプを見てみましょう。
歯ぎしり型(グラインディングタイプ)
【該当項目】①、③、⑥、⑫、⑬、⑯、⑰、⑲
歯の全体を横にギリギリとこすり合わせるタイプです。
その運動範囲は広く、そのために全体がすり減っていきます。夜間寝ている間にすることがほとんどです。
異常な摩耗
人の歯は年齢を重ねるにつれ、すり減ります。しかし、歯ぎしりをしている年月が長いほど、また強い力で歯ぎしりするほど、歯の磨り減り方は極度に進行します。歯の長さが短くなっていくのが特徴です。
歯の付け根のえぐれ
ブラキシズムによって歯に力が加わると、歯の根元に応力が集中して、くぼんだように歯質がなくなっていきます。その部分は冷たいものにしみたりしやすく(知覚過敏)なります。
食いしばり型(クレンチングタイプ)
【該当項目】②、④、⑤、⑦、⑧、⑫、⑭、⑮、⑱、⑳
無意識のうちに噛みしめているタイプで、日中、夜間にかかわらずしています。
噛みしめるだけでは音はなりませんが、わずかに横に動かすこともあり、その場合は音がすることもあります。
骨隆起
噛みしめをよくする人の多くに歯ぐきの隆起が見られます。下顎の裏側や上顎の中央に出る人が多いようです。その名のとおり骨が隆起したもので、病気ではありません。
頬・舌粘膜の圧痕
いつも上下の歯を噛み合わせているので、頬の内側や下の横に白っぽい歯型の跡がついています。奥の歯がとても短くなっている。噛みしめをする人によく見られるのが、奥歯の歯の高さが短くなっていることです。
歯の破損
噛みしめ型の人は、歯に圧力が集中したときに破損を起こしやすくなります。
歯の動揺
歯に指をあてて、横にギリギリやってみましょう。動揺している歯があれば、指で動きを感じることができます。
咀嚼筋(噛むときに動く筋肉のこわばり)
これらの筋肉にこわばりや痛みを生じます。指で押さえると痛みを感じる場合があります。噛みしめ型の人は高頻度で肩こりや頭痛を併発しています。
すでに顎関節症になっている
【該当項目】⑨、⑩、⑪、㉑、㉒
歯ぎしり、噛みしめをしている状態を長い間放っておいたのではないでしょうか?ブラキシズムによって顎関節症になっている可能性があります。
放っておくと様々な症状が起こってきますので早めに治療されることをおすすめします。
歯ぎしりや噛みしめを放っておくと顎関節症に
歯ぎしりや噛みしめを放っておくと、顎の周りを覆う筋肉に強い負荷がかかり、またその頻度が多くなればなるほど筋肉は緊張状態が長く続き、硬くなってしまいます。
そうすると顎の骨にも多大な負荷がかかり、顎の骨に異常をきたし、口をあけるとカクカク音がなったり、痛みがでたりしてきます。
これが顎関節症です。顎関節症がひどくなると口をあけて話すだけで痛みを感じたりするだけではなく、さらには口を開けるのも困難になったりといった症状が現れる場合もあります。
ブラキシズムは発見しにくい
ブラキシズムは無意識下で行われます。夜寝ているときにギリギリと音を立てる人は、周囲の人から指摘されるかもしれませんが、ほとんどの場合、当事者は気づいていないようです。
昼間している噛みしめの場合も、全く気づいていない方が大半です。多くの方が大なり小なりのブラキシズムをしていると思われます(とある研究では成人の80%にも及ぶとしている)が、自覚している人は10%未満であるといわれています。
とても怖いブラキシズム
とある患者さま。朝起きると、突然歯ぐきが腫れていました。奥歯がぐらぐらしてご飯もろくに食べられない。しかもガマンできない痛みでした。以前から冷たいものにしみていたようです。
X線写真を撮ってみたら、歯が真っ二つに割れていて、歯ぐきが化膿していました。「そういえば、家族から歯ぎしりがうるさいって言われていたなぁ。特に最近は忙しくてストレスもたまっていたし・・・」お聞きしてみると、こんなお話をしてくださいました。
結局、割れた歯は抜かなくてはなりませんでした。原因は、「ブラキシズム」による歯の破折と、そこへ細菌が入ったために起きた急性の炎症でした。