顎関節症って片側だけ痛むときってある?
投稿日:2025年10月15日
カテゴリ:顎関節症
顎関節症というと「顎が痛い」「口を開けると音がする」「開けづらい」などの症状が代表的ですが、実際に患者さんからよく聞かれるのが「顎の片側だけに症状があるのですが、これはおかしいのでしょうか?」という質問です。
結論から言うと、むしろ顎関節症の痛みが片側だけに生じることの方が多いです。
両側に症状が出るケースもありますが、日常生活における偏りや悪習癖、就業している仕事の関係などから、どちらか一方の関節や筋肉だけに負担が集中することが多いのです。
片側だけ痛くなるのはなぜ?
1. 噛み癖・咀嚼の偏り
顎関節症の片側に痛みが生じる原因としてよく挙げられるのが、噛み癖の偏りです。
私たちは無意識のうちに「噛みやすい側」を選んで食事をしていることが多く、同じ側ばかりで噛んでいると、その側の咀嚼筋(咬筋や側頭筋)が過度に緊張します。歯の虫歯治療などが理由で片側だけでしか咀嚼が出来ない時期が続くと生じます。
この筋肉の緊張が顎関節を引っ張り、関節円板や靭帯に負担をかけて、最終的に「片側だけ痛む」という状態を招きます。
2. 歯の噛み合わせの不均衡
虫歯の治療によって詰め物や被せ物になったことで、歯列のずれや噛み合わせのバランスの変化などにより、上下の歯の接触が左右で異なっていく場合もあります。
紙一枚の厚みがあるだけで歯は違和感を感じてしまうほどですので、片側でしかしっかり噛めない状態が続くと、関節の動きがアンバランスになり、片側の顎関節だけが酷使されることになります。
特に矯正治療中や歯科治療後に片側だけ違和感を感じる場合は、噛み合わせの微妙なズレが影響していることがあります。
3. 筋肉の緊張・姿勢の悪さ
長時間のデスクワークやスマートフォンの使用で、姿勢に変化がない状態を長時間保持するようなことが多いと、首や肩の筋肉が硬くなりがちです。
頭の位置が前に出たり、片方の肩が下がったりといった頭の位置をはじめとする姿勢のゆがみは、下顎の位置にも影響し、それは結果として顎関節の動きに偏りを生じさせます。
また、ストレスによる歯ぎしり食いしばりのクセがある場合、無意識に片側ばかりで力を入れていることも多く、関節や筋肉へのダメージを蓄積させてしまいます。
4. 関節内部の構造変化
顎関節には「関節円板」というクッションのような組織があります。
この円板が本来の位置からずれたり(前方転位)、引き伸ばされたり圧縮されてしまい変形することで、関節の動きが制限されたり、円滑な運動が妨げられたりすることがあります。
その結果、開口時に「カクッ」という関節雑音(クリック音)や、開口障害、関節疼痛といった症状がその問題がある側に集中して出るのです。
放置するとどうなる?
軽度の顎関節症の場合、時間の経過や生活習慣の見直しによって痛みが軽快することもあります。
しかし、「片側だけだから」「症状が軽いから」と放置してしまうと、知らないうちに反対側の関節や筋肉にも負担が波及し、最終的に両側の痛みや運動制限へと進行することがあります。
また、片側の使用頻度が高いと筋肉が鍛えられてしまうので筋肉が肥大しますので、顔のゆがみや噛み合わせのさらなるズレが生じることもあります。
対処法と予防法
1. 顎関節の安静を保つ
まずは痛みがある側の顎関節をなるべく休ませることが第一です。
硬いものの咀嚼や大開口(あくび・大笑いなど)は避け、関節や筋肉に負担をかけず休める期間をつくりましょう。
2. 両側を使って咀嚼する意識を持つ
食事の際に、無理でなければできるだけ左右をバランスよく使用して咀嚼するように心がけましょう。最初は意識しないと難しいかもしれませんが、習慣によって一片に偏った咀嚼バランスは意識付けで改善させることが出来、それにより顎関節への負担を減らします。
3. 顎や首周囲への負担が少ない姿勢を意識する
頭が前に出た姿勢(猫背・スマホ首)は、首・肩だけでなく顎関節に負担をかける大きな要因です。
椅子に深く腰をかけ、背筋を伸ばし、下顎を引いた姿勢を保つことで、顎関節へのストレスを軽減できます。しかし、姿勢の保持は顎の元々の発育背景や呼吸環境などで限界があることを知っておく必要があります。
4. 歯ぎしり食いしばりによる歯や顎への負担をコントロールする
夜間の歯ぎしり食いしばりは片側で行われることが多いです。そのため、その自覚がある場合は、就寝中のマウスピースの使用を検討するのが有効です。
顎関節や筋肉への過剰な力を分散させ、トラブルを可能な限り防ぎます。
5. 歯科医院で診断を受ける
片側の顎だけ痛みが続いたり、むしろ増悪していく場合、当然自然治癒する可能性は低いです。
自己判断での対処はかえって症状を悪化させる場合もあるため、症状の改善が見られない場合は早めに歯科や口腔外科を受診し、原因を明確にしたうえで適切な治療や指示を得ることが大切です。
まとめ
顎関節症の痛みが片側だけに出るのは珍しいことではありません。
多くの場合、噛み癖や姿勢のゆがみ、筋肉の使い方の偏りが背景にあります。
そのまま放置すると両側に症状が広がる可能性があるため、早めの対処が肝心です。
「片側だけだから大したことはない」と考えず、体のバランスを整えるチャンスととらえ、専門家のサポートを受けながら改善を目指しましょう。
■ 他の記事を読む■