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顎関節症は遺伝するの?

投稿日:2025年4月27日

カテゴリ:歯ぎしり・食いしばり 顎関節症

顎の痛みや口の開閉時の異音、開口障害など、日常生活に支障をきたすこともある顎関節症。

顎関節症に悩む家族の方がいる場合、「顎関節症は遺伝するのでは?」と疑問に思う方も少なくありません。しかし、顎関節症そのものが遺伝するものであるかという問いに対しては、慎重な視点が必要です。

結論から言えば、顎関節症そのものが純粋な遺伝で発生するものではない上、遺伝的形質によって発症する可能性も低いとされています。本記事では、顎の成長発育における遺伝と環境の影響を比較し、なぜ「遺伝するように見えるのか」という点に焦点を当てながら、顎関節症の本質に迫っていきます。

 

遺伝は顎関節症の主要な原因ではない

顎関節症は、関節やその周囲の筋肉、成長発育過程などに何らかの異常が生じることで発症します。さらに歯ぎしり食いしばり、不正咬合、ストレス、外傷なども複合的に絡み合ってきます。

確かに顎の形や骨格のバランスなどは遺伝的な要素によって決まる部分はある程度存在します。

しかし、顎関節症はあくまでも「機能的な障害」であり、明確な遺伝子異常によって発症する疾患ではありません

そのため、たとえ親が顎関節症であっても、子が必ずしも発症するとは限らず、逆に親が問題なくても子に症状が現れる場合もあるというわけです。

 

「似たような環境」が症状を誘発する?

では、なぜ家族間で顎関節症が似たように見られることがあるのでしょうか? その鍵を握るのが「成長発育環境」です。

成長期における小児の顎の成長は、親の遺伝だけでなく、その家庭の食習慣、呼吸習慣、姿勢、日常的なストレスがかかる頻度などの生活環境によって大きく左右されます。例えば、柔らかい食事を好む家庭で育った子の場合は、咀嚼に必要な筋肉や舌の運動不足であったり、顎の骨の発達が理想的になされず不十分になりがちで、それが顎関節への負担につながることもあります。

また、姿勢の悪さや口呼吸といった習慣も、顎の発育に影響を及ぼし、咬合不全を引き起こすリスクがあります。これらの生活習慣は親子で似通いやすいため、結果的に似たような顎の問題を抱えることになり、「遺伝する」ように見えるのです。

 

遺伝要素は「形質」に影響することはある

もちろん、完全に遺伝の影響がないというわけではありません。たとえば、骨格性の下顎前突や上顎劣成長など、顎の骨格的な特徴(形質)は遺伝する可能性があります。(それを示唆するエピソードとして、スペインのハプスブルク家の肖像画があります。)

これにより、咬合にずれが生じたり、関節に過度なストレスがかかることで顎関節症に至るケースもあります。しかし、これも絶対ではなく、発育環境によって改善することもありえるのです。

 

予防の鍵は「発育環境の整備」

顎関節症の発症リスクを減らすためには、遺伝であきらめるのではなく顎の成長発育環境の整備に注力することが最も効果的です。具体的には、

これらは遺伝と違い取り組み次第で変化させられる要因です。

意識することで、たとえ顎に遺伝的傾向があったとしても、環境顎関節症の発症を防ぐことが可能です。

まとめ

顎関節症は「遺伝病」ではなく、親から子に必ず受け継がれるものではありません。ただし、顎の形や成長の方向性に遺伝的な影響は一部あるため、似たような口腔状況になりやすいという傾向は否定できません。

しかし、それ以上に重要なのは「育った環境」であり、家族の中で同じような生活習慣や姿勢、ストレス環境にあることで、あたかも遺伝するかのような結果になることが多いのです。

つまり、親が顎関節症だからといって必ず子どもも発症するわけではなく、逆に適切な生活環境を整えれば予防も可能です。顎関節の健康を守るためには、日常生活の中でのちょっとした意識と習慣が何よりも大切なので​す。

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