顎関節症で手術は必要なときってあるの?
投稿日:2025年10月3日
カテゴリ:顎関節症
顎関節症は、その名の通り顎関節やその周囲の顎に関する筋肉に不調をきたす病気で、「口を開けるとカクッと音がする」「あごが痛い」「口が大きく開かない」といった症状を示します。
歯科を受診する患者さんの中でも比較的多くみられるもので、現代では珍しいものではありません。
では、顎関節症になったときに「手術」が必要になるのでしょうか?結論から言うと、手術は顎関節症の治療法のひとつであり、重篤なケースに限って行われるのが現実です。以下では、顎関節症の治療の流れと、手術が必要となるケースについて整理してみましょう。
顎関節症の治療は段階的に行われる
顎関節症は患者との問診や相談を経て、症状の強さや進行度に応じて段階的に治療法が選択されます。
大半の患者さんは手術的を行うことなく、他の手段を講じることで改善・治癒していきます。なので顎関節症の初期症状からいきなり手術が検討されることはほとんどありません。
顎関節症に対する治療の代表例
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・マウスピース(ナイトガード)
就寝中に装着し、噛み合わせや歯ぎしりの負担を減らす。 -
・理学療法
顎の周囲の筋肉が過度な緊張をしている場合、それを緩めて血行を促進させるためのストレッチや温熱療法を指導。 -
・薬物療法
顎関節症で痛みを伴う場合消炎鎮痛剤を処方したり、場合によっては筋弛緩薬の投与によって筋肉の緊張を解いていきます。 -
・生活習慣の改善指導
環境要因によるストレスのコントロールや、噛み癖の気づき改善、硬い食べ物を摂取する頻度をコントロールする、といったことを通して顎への過度な負担を軽減させていきます。
これらの治療を行うことで、顎関節症の多くは数か月以内に症状が治癒・軽快することが知られています。
手術が必要になるのはどんなとき?
それでは、手術が検討されるのはどのような場合でしょうか。ポイントは「保存的治療を行っても改善しない重度の症状」や「明らかな顎関節の障害」がある場合です。
手術が適応されるケースは、以下のような状況が認められた場合です。
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・口が極端に開かない(開口障害が重度)
指を縦にして2本も入らないほどの強い開口制限が続き、日常生活に大きな支障をきたしている場合。 -
・関節円板の位置異常が強く、戻らない場合
関節の中にあるクッション(関節円板)がずれたまま戻らず、顎関節の動きを著しく妨げている場合。 -
・関節内に癒着や骨の変形がある場合
顎関節内部の組織が癒着したり、顎関節の骨の変形が進み、顎の運動が妨げられているケース。 -
・痛みが慢性的に強く、保存療法ではコントロールできない場合
顎関節症に行われる手術の種類
顎関節症の手術といっても、症状や状態に応じて、いくつかの方法があります。
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・関節穿刺・関節洗浄療法
注射針を関節に刺して関節に洗浄液(生理食塩水やヒアルロン酸など)を流し込んで炎症物質を洗い流す方法。 -
・関節鏡手術(関節鏡視下手術)
小さく切開し、そこからカメラを関節内に挿入し、癒着している部分を切り離したり、関節円板の位置異常を整復する。 -
・開放手術(関節円板切除・形成、関節形成術など)
口の中ではなく外側からアプローチする方法。皮膚を大きく切開して関節に直接アプローチする方法。文字通り関節円板を切除したり人工関節などに置換したりする。重度の変形や癒着がある場合に行われる。
これらはいずれも保存療法で改善がみられなかった場合の「最後の選択肢」といえます。
まとめ:まずは保存的治療から始めよう
顎関節症は多くの場合、手術を必要としない疾患です。
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・軽度~中等度の顎関節症は、マウスピースや生活改善など保存的治療で改善する
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・手術が必要なのは「重度の開口障害」「関節内の癒着や変形」などの限られたケース
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・手術を行う場合でも、関節鏡手術など比較的低侵襲な方法から検討される
顎関節症と診断されたからといって、すぐに手術を考える必要はありません。まずは保存的治療をしっかり行い、それでも改善が難しい場合に外科的処置が検討されるという流れを理解しておくと良いでしょう。
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