顎関節症を放置するとどうなりますか?
投稿日:2025年4月13日
カテゴリ:顎関節症
顎関節症とは顎関節やその周辺の筋肉に異常が生じることで引き起こされる疾患です。初期症状が軽度であることから放置されがちですが、適切な治療を受けないと症状が悪化し、日常生活に深刻な影響を与えることがあります。今回は顎関節症の学術的分類ごとに生じる症状と、それに対する治療法について詳しく解説します。
1型:咀嚼筋痛障害
顎関節症の初期段階で、文字通り顎を動かす筋肉に限局した痛みなどが主な症状となります。その痛みで顎の運動が制限されてしまうなどの影響がでます。
主な症状:
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・顎を動かす筋肉の軽い痛みや違和感
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・噛み合わせの違和感
放置した場合の影響:
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筋肉の痛みが徐々に増悪してきたり、痛む範囲が拡大していきます。それにより筋肉だけでなく顎関節そのものが痛み始めてしまい、次の段階に症状が進んでしまうことがありえます。なお、筋肉の痛みが軽度であったり違和感程度しかない場合は消退していくこともあります。
この段階での治療法:
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・生活習慣の見直し(硬い食べ物を避ける、大開口を避ける など)
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・マウスピース(ナイトガード)の装着による負担軽減
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・筋肉への軽いマッサージや顎の開口訓練。痛みがある場合は積極的に行わない。
- ・鎮痛剤や消炎剤の投与
2型:顎関節痛障害
主な症状:
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・顎の運動にこわばりや痛みを感じる
- ・咀嚼時の顎の痛み
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・口の開閉時に引っかかりを感じる
放置した場合の影響:
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・炎症が広がり、顎関節周囲の筋肉や靭帯に影響を及ぼす
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・口が大きく開かない「開口障害」が発生したり、それに伴う痛みの増悪の可能性
この段階での治療法:
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・マウスピース(ナイトガード)の装着による負担軽減
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・筋肉への軽いマッサージや顎の開口訓練。1型のときとは異なり、多少の疼痛を伴ったとしても継続することが多いです。
- ・鎮痛剤や消炎剤の投与
3型:顎関節円板障害
症状:
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・顎関節の強い痛みや雑音
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・顎の歪みや顔の非対称性の自覚
- ・顎の運動量の制限・減少とそれに伴う食事困難など
放置した場合の影響:
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・関節円板の損傷に伴う痛みの増悪
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・顎関節の可動域の大幅な制限が生じたり、口が開けにくくなる(クローズドロック)
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・精神への影響(精神的ストレス蓄積やうつ症状の併発など)
この段階での治療法:
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・マウスピース(ナイトガード)の装着による負担軽減
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・筋肉への軽いマッサージ
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・場合によっては経過観察も選択される
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・顎の積極的開口訓練(思い込みなどから自ら開口制限をしている場合が多いので)
- ・鎮痛剤や消炎剤の投与
4型:変形性顎関節症
症状:
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・顎の運動障害や運動制限が著しく生じる
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・顎の動きに伴う関節雑音(クレピタス音)
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・顎関節周囲の強い炎症と疼痛
放置した場合の影響:
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・関節円板の穿孔(破損)
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・関節の変形とそれによる運動制限のさらなる3増悪
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・メンタルヘルスの悪化
この段階での治療法:
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・マウスピース(ナイトガード)の装着による負担軽減
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・咬合状況にあわせて被せ物や詰め物で噛み合わせを調整
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・顎の位置に合わせての矯正治療
- ・鎮痛剤や消炎剤の投与
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・かなり症状が強い場合は顎関節に対する外科的アプローチをとることもあります
まとめ
顎関節症は病態によって分類され、それぞれの分類ごとに治療方法が異なってきます。
基本的に顎関節症というものは放置して治ることは稀です。そのような自然治癒を期待できるのは顎関節症の初期の初期であることが多いです。しかしたいていは治癒することなく慢性化したり、徐々に進行するため、これくらいなら…と放置しておくと、軽度な違和感でも最終的には生活に支障をきたすトラブルを招く可能性が十分にありえるというわけです。
歯科医院を受診し、専門的な診断を受けることでそういった未来を予見し、重篤な症状を未然に防ぐことができるかもしれません。
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