顎関節症は歯医者さんで治せますか?
投稿日:2024年11月12日
カテゴリ:顎関節症
顎関節症について、歯科医院での相談や治療が可能かどうかを疑問に思う方も多いと思います。今回は、そもそも歯科医院での顎関節症の治療は可能なのかについて方法から、それらがどのように顎関節症の改善に役立つのかについて解説しようと思います。
1. 顎関節症とは?
まずあらためて顎関節症について簡単に説明します。顎関節症は、顎の関節やその周りの筋肉に痛みや機能異常が起こる疾患です。一般的に、以下のような症状がみられます。
- ・顎を動かすと痛む
- ・顎がスムーズに動かない
- ・開口時や閉口時に「カクッ」または「ゴリッ」という音が鳴る
- ・口が十分に開かない、開けにくい
- ・食事中、咀嚼すると顎関節に不快感や痛みを伴う
顎関節症の原因には、歯ぎしり食いしばり、噛み合わせの不調和、顎周りの筋肉の過度の緊張、日常的な姿勢の悪さ、殴打などによる外傷などさまざまな要因が挙げられます。症状が軽度の場合は自然に改善、知らないうちに消退していくケースもあります。しかし中には長期化や悪化するケースもあり、ひどい場合は専門的な治療が必要になることもあります。
2. 歯医者での顎関節症治療が可能か?
結論から申しますと、顎関節症の治療は歯医者で行うことができます。
歯科医院では顎関節の形や運動の仕方などから異常を診断し、症状や原因に応じた適切な治療を提供することができます。歯科医師は歯だけでなく、口腔内の構造や噛み合わせも診ているので顎関節症に関する治療を実施することができます。
3. 歯医者で行われる顎関節症の治療方法は?
歯科医院で行われる顎関節症の治療方法にはいくつかの選択肢があります。症状や原因に応じて、以下の治療が行われます。
(1) マウスピース(ナイトガード)
マウスピース療法は、顎関節症の患者に対して最もよく用いられる治療法です。シリコンゴム製、またはプラスチック製のマウスピースを上顎または下顎いずれかに装着することで、噛み合わせや歯ぎしりの圧力を軽減し、顎関節への負担を減らします。
メリット
- ・マウスピースによって歯同士の干渉を減らせる(=負担が減る)ので痛みが軽減する
- ・比較的簡単に導入できる
- ・保険診療の範囲内で適用できる
デメリット
- ・効果を実感するには長期間装着する必要がある場合が多い
- ・マウスピースの保管や定期的なメンテナンスが必要
- ・根本的な改善に至ることが少ない
治療期間
通常3か月~6か月程度使用していただき、定期的に症状の変化を追います。なお症状が落ち着いたら装着頻度を減らしたりします。
(2) 噛み合わせ調整
顎関節症の原因が噛み合わせの不良にある場合、歯の高さや形を調整し、正しい噛み合わせを実現することが効果的です。歯の形状をわずかに調整するだけでも、顎関節への負担が軽減されることがあります。しかし現在では天然歯に対して行うことは減ってきています。大抵の場合、補綴物(詰め物や被せ物)が原因であったりすることが多いことから、そちらの形態を見直すことが主流です。
メリット
- ・顎の運動においての障害を除去できる
- ・長期的な改善が期待できる
デメリット
- ・天然歯の場合、削合するのであれば元に戻せない
- ・被せ物や詰め物の形を見直す場合、その数に応じてコストがかかる
治療期間
小規模な調整などであれば1~3回の通院で完了しますが、多数の歯を調整したり複雑な場合は数か月、場合によっては1年以上かかることもあります。
(3) 理学療法・マッサージ指導
顎関節症の症状が筋肉の緊張や筋力不足に関連している場合、理学療法や顎周りのリハビリが有効です。歯科医院においては口腔外科医や歯科医師の指導のもとで、顎を動かす筋肉のストレッチやマッサージ、特定の筋に対しての機能増強を目的とした筋力トレーニングも行われることもあります。
メリット
- ・顎を動かす筋肉の血流を促すことで緊張を和らげ、顎関節への負担を減らすことができる
- ・ちゃんと指導を受ければ自宅で簡単に行えるリハビリもあり、継続しやすい
デメリット
- ・即効性は低い
- ・定期的な受診が必要
- ・ある程度のマッサージ方法の修得・練習が必要
- ・場合によっては効果が出にくいことがある
治療期間
効果が現れるまでに数週間~数か月かかることがほとんどです。
(4) 投薬治療
痛みや炎症が強い場合、一旦鎮痛剤や筋弛緩薬の処方を行い、症状の鎮静をはかることがあります。また、カウンセリングなどを経た上で必要に応じて抗不安薬が処方されることもあります。
メリット
- ・痛みの即時緩和が得られる
- ・他の治療と併用することで、短期的な症状改善が見込める
デメリット
- ・薬の効果が一時的であることがほとんど
- ・治療の主体となることはないので根本的な解決にはならない
- ・副作用のリスクがある
治療期間
通常は短期間の服用を前提として実施します。もちろん長期間の使用は避けるのが好ましいです。
(5) 矯正治療
歯並びや上顎と下顎の関係性を矯正することで、顎関節への負担を減らすことができます。
メリット
- ・顎関節以外に歯への負担も軽減させることができる
- ・歯並びや顎の関係を見直すことができ、顎の状態を理想的に整えることができる
- ・副次的に歯並びも改善されるので審美的な改善もできる
デメリット
- ・治療効果があらわれるのが遅い
- ・治療期間が個人差があり、総じて長い傾向がある
- ・歯や顎に対して多少の痛みを伴うことがある
治療期間
平均3~5年ほど。個人差があります。
(6) 外科治療
痛みや炎症が著しく、顎関節の運動に大きく影響を及ぼすような重度の顎関節症である場合に行います。大学病院といった大規模医療施設で実施されていることがほとんどです。
メリット
- ・原因を直接除去することができる
デメリット
- ・外科的な侵襲を伴う
治療期間
外科的アプローチの規模にもよりますが、入院が必要な場合もあります。
4. 歯医者での顎関節症治療の効果と限界
歯医者での治療は多くのケースで何らかの形で効果が期待できます。しかし、すべての顎関節症を完治させるわけではありませんし、思ったほどの治療効果を実感できずに終わることもあります。顎関節症は歯科領域における要因だけでなく、姿勢などといった歯科領域外の要因も絡み合って発症するため、必ずしも一つの治療法を実施することで解決するとは限りません。
また、顎関節症は重度になればなるほど完治は困難になりますし、効果も得にくくなっていきます。さらに治療方法も外科的なアプローチが必要になるなど、治療の規模が大きくなっていく傾向があります。
まとめ
顎関節症は、歯科医院での治療が大小差はあれど有効なケースが多いです。
顎関節症の進行度にあわせて様々な治療方法が用意されていますが、顎関節症は多くの要因が絡み合う複雑な疾患であり、歯医者での治療を受ければ万事解決というわけではありません。他科との連携が必要になる場合もありますし、セルフケアとして生活習慣の見直しやストレス管理も求められてくることもあります。
顎関節症が気になる方は、まずは歯科医院で相談し、自分の症状や原因に合った治療方法を見つけることが大切です。
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