顎関節症が自然に治ることってありえる?
投稿日:2025年9月7日
カテゴリ:歯ぎしり・食いしばり 顎関節症
「口を開けるとカクッと音がする」「朝起きると顎がだるい」「硬いものを噛むと痛みがある」――これらは顎関節症の代表的な症状です。顎関節症は、現代において生活習慣やそれに伴う顎への慢性的な負担、心身にかかるストレスが常に存在しうる社会と深い関わりがあるとされ、日本人のほとんどが大なり小なり顎関節症の症状を経験するといわれています。
その顎関節症についての相談において、よく聞かれる質問に、「顎関節症は自然に治るのか?」というものがあります。
結論から言えば、顎関節症の症状が自然に消退することはありえます。
今回は、顎関節症が自然に治るケースと、慢性化してしまうケースの違いについて解説します。
顎関節症が自然に治るケース
顎関節症の症状の発現原因は複雑で、生活習慣や噛み合わせ、上顎と下顎の関係性、筋肉の緊張頻度や強度、呼吸環境、ストレスなどの複数の要因が重なり合って発現に関与しているといわれています。当然、関わってくる要因が少ないほど症状が軽く、自然に軽快する可能性が高くなります。
自然に治りやすい条件
-
・顎関節や筋肉に長期的または大きな負荷がかかっていない
-
・一時的な急激なストレスなどによる噛みしめが原因
-
・口の開閉時に軽度の違和感や音のみで、痛みが強くない
-
例えば、受験や仕事のプレッシャー(一時的なストレス)などで短期間で急に顎に負担がかかったり、顎への殴打などの外傷で顎関節症の症状が出た場合、ストレスの原因、自然に治ることもあります。
多くの場合は慢性的に症状が続く
一方で顎関節症の多くは一度治ったと思っても、再び症状が現れるという発現と消退のサイクルを繰り返します。また、症状が生活に大きく影響を与えない範囲で慢性的に続いているケースも多く見られます。
慢性化のメカニズム
-
関節や筋肉に微細なダメージが残る
症状が軽快しても、関節円板の位置ズレや筋肉の緊張が残ることで、完全に健康な状態には戻りにくい事が多いです。 -
生活習慣が変わらない
歯ぎしり・食いしばり・頬杖・姿勢の悪さなど、顎に負担をかける習慣が継続すると再発しやすくなります。 -
関節や噛み合わせの基本的な構造が変化しない
そもそも、顎関節に負担をかけるような噛み合わせや骨格状況が原因である場合、骨格や噛み合わせレベルでのアプローチが必要になるケースも存在します。 - ストレスによる再燃
自身を取り巻く環境などから精神的な緊張が強まると、無意識に顎を噛みしめる頻度が増えるため、症状がぶり返したり慢性化しやすくなります。
よくある慢性化の症状
-
・開口時のカクカク音(関節雑音)が消えない
-
・顎関節や顎周囲の筋肉の痛みが出たり消えたりする
-
・顎の可動域に制限がかかり、大きく口を開けられない
-
・首や肩のこりだけでなく頭痛、ひどい場合は末梢のしびれなど、全身症状へ波及
このように、顎関節症は「完全に治った」と思っても、再発する可能性が高いです。
放置するとどうなるか?
顎関節症は直接命に関わる病気ではありません。しかし放置すると生活の質を下げるだけでなく、体内の危険信号を放置しうる要因にもなります。
-
・関節の変形による顎の可動域の狭小化により食事がしにくくなる
-
・慢性的な頭痛や肩こり
特に「痛みを感じないから大丈夫」と思って放置すると、関節の構造的な変化(関節円板の損傷や骨の変形)が進み、症状がより治りにくくなる顎変形の恐れがあります。
また、顎関節症が呼吸環境の不良の一端の症状として発生していることも多いです。下顎の位置が通常よりも喉側に引っ込んでしまっていると、顎関節に負担をかけるだけでなく、気道を狭めている状況も併発させているからです。
改善・予防のためにできること
顎関節症は複雑にさまざまな要因が絡んで発症するため、完全に治すことは難しいというのが現状です。しかし、セルフケアや医療機関での治療を組み合わせることで、症状をコントロールすることは十分可能です。
慢性的な顎関節症に対するセルフケアのポイント
-
・硬いものや大きな食べ物を
-
・頬杖や片側だけで噛むような片側に負担をかけるような習慣をやめる
-
・入眠時アプローチを見直すなど、副交感神経優位になりやすい環境を整える
-
・顎周囲の筋肉を温めた上でセルフマッサージを行うことで筋肉の過度な緊張を和らげる
歯科医院での治療・対応
-
・マウスピース(ナイトガードやスプリント)による歯ぎしり食いしばりから顎を守る対策
-
・被せ物詰め物による咬合調整や矯正治療による噛み合わせの改善治療実施
-
・理学療法や薬物療法による痛み緩和(対症療法)
まとめ:自然治癒することはあるが、多くは慢性的に続く
顎関節症は、非常に軽度の場合は自然に治ることもあります。しかし多くの場合、なんらかの症状が残り、症状が出たり消えたりを繰り返しながら慢性化することが多いです。
「自然に治るかも」と放置するのではなく、まずは歯科医院に相談することが重要です。適切な指示指導を受け、症状を早めにコントロールすれば、顎関節症による生活の不自由や慢性化のリスクを減らすことができます。
当院では現在、顎関節症のカイロプラクティックに特化した理学療法の先生と提携するシステムを構築中です。おってこの記事などで紹介する事ができればと思います。
■ 他の記事を読む■