歯ぎしり食いしばりを放置した際に生じる問題について
投稿日:2024年5月10日
カテゴリ:歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしり食いしばりは、放置するとさまざまな問題を引き起こす可能性があります。今回は、歯ぎしり食いしばりが放置された場合に口腔内と口腔外で生じる問題をそれぞれ説明したいと思います。
口腔内の問題
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歯の咬耗・磨り減り:
- 歯ぎしり食いしばりの習慣があると、歯の表面が擦り減る可能性が高まります。これにより、歯の形状が変化し、咬合不良や歯並びの問題だけでなく顎の運動異常が生じる可能性があります。
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歯のひずみと破折:
- 歯ぎしり食いしばりによって、歯が強い圧力にさらされることで、歯がひずんで破折(チッピング)する可能性があります。これにより、歯の構造が損なわれ、むし歯のリスクが高まったり、噛み合わせが変化してしまいうリスクが高まります。また、歯のひずみそのものが歯の内部にある神経(=歯髄)を圧迫し知覚過敏を誘発することもあります。
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歯周組織の損傷:
- 歯ぎしり食いしばりによる歯の圧力は、歯周組織にも影響を与える可能性があります。歯ぐきや歯槽骨にダメージを与え、歯周病に感染しないにも関わらず歯ぐきがさがってしまいます。しかし、歯周ポケットは形成されているためそこに歯周病原菌が侵入してしまうと本当に歯周病に罹患してしまうリスクがあります。
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顎関節障害(TMJ障害):
- 歯ぎしり食いしばりは、顎関節に負担をかけます。長期間にわたって続く歯ぎしり食いしばりは、顎関節の炎症や変形、それに伴う機能障害を引き起こす可能性があります。
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口内炎や潰瘍の発生:
- 歯ぎしり食いしばりによって歯の表面に頬の内面が押し付けられると、口内炎や潰瘍が発生する可能性が高くなります。食いしばった際、頬に存在する「咬筋」と呼ばれる筋肉が力こぶを作って頬の内面を圧迫することが原因です。頬の内面に白い線状の痕がついている場合は要注意です。
口腔外の問題
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頭痛や顔面痛:
- 歯ぎしり食いしばりは、顎や顔面の筋肉に過度の緊張と圧力を加えます。そのため、頭痛や顔面痛の原因となります。これは、顎の周囲の筋肉が緊張して、まるで筋肉痛のように痛みを引き起こすことが原因です。
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睡眠障害:
- 歯ぎしり食いしばりはしばしば睡眠中に発生します。しかし、健常な場合でも歯ぎしり食いしばりは十数分程度は生じるとされているため、ここでいう歯ぎしり食いしばりはそれを上回る長時間の歯ぎしり食いしばりで、それらは睡眠障害の原因となります。歯ぎしり食いしばりを行うことで交感神経が優位となり、それによって睡眠の質が低下し、日中の疲労や集中力の低下などの問題を引き起こす可能性があります。また、歯ぎしり食いしばりは睡眠の浅いREM睡眠中に発生するという点では、歯ぎしり食いしばりを予防するために、別の側面から睡眠の質を高めるアプローチも必要になるとも言われています。
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耳の症状:
- 歯ぎしり食いしばりが続くと、下顎の関節が耳の近くにある上顎の関節の収まる凹みに擦れるようになったり、強い圧力を加えるようになります。そうなると、耳の周囲の筋肉や組織にも影響を与えることがあります。これにより、耳の痛みや聴覚異常、平衡感覚の異常やふらつきなどの症状が生じる可能性があります。
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顔面形状の変化:
- 長期間にわたって続く歯ぎしり食いしばりは、顎や顔面の形状に影響を与える可能性があります。顎の筋肉は歯ぎしり食いしばりによる過緊張が続くと増強されて肥大しますし、顎の骨もそういった過大な力を受け続けると歪んでいきますので、結果として顔の輪郭が変化したりすることがあります。
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心理的影響:
- 歯ぎしり食いしばりはストレスを解消するうえでは切っても切れない関係にあります。ある程度は歯ぎしり食いしばりをすることでストレスをコントロールするといった心理的に有用な面がある一方で、過度な歯ぎしり食いしばりを行うことで交感神経が優位となってしまう面もあることから、落ち着きにくくなったり不安の増大につながる可能性があります。
以上のように歯ぎしり食いしばりを放置すると、口腔内および口腔外でさまざまな問題が生じる可能性があります。紹介したような症状がおありでしたら、もしかしたら知らず知らずの間に歯ぎしり食いしばりが影響を与えている可能性があります。症状がある場合は、当院での相談からまずはいかがでしょうか。
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