子どもでも顎関節症になるの?
投稿日:2024年2月9日
カテゴリ:歯ぎしり・食いしばり 顎関節症
大人の顎関節症はよくある、というより大抵の場合顎関節症は大人の症状として認知されている風潮があるかと思います。実際、顎関節症のほとんどは大人です。しかし実際は子どもであっても顎関節症になりえます。今回はなぜ最近子どもであっても顎関節症になってしまうのか、そのメカニズムと対策についてお話したいと思います。
まず、子どもの顎関節症の原因にはどのようなものがあるかについてお話していきます。
①顎の成長 … 小児は絶えず成長発育しています。上顎と下顎も例外ではありません。しかし、上顎と下顎の成長発育パターンは一致していません。それは「スキャモンの成長曲線」というもので説明することが出来ます(ネット検索していただければグラフが出てくるかと思います)。それによると上顎は神経型で、下顎は一般型です。つまり、下顎より先に上顎が成長していくわけで、常に噛む位置が不安定となるため一時的に歯ぎしり食いしばりが発現し、顎関節症のような症状につながる可能性があります。しかしこの場合、成長とともに消退していきます。
②悪習癖 … 悪習癖(あくしゅうへき)とは、歯科においては顎の成長や歯並びに悪影響を及ぼす習慣のことをいいます。指しゃぶりや爪を噛んだり(咬爪癖)、唇を噛んだり(咬唇癖)、舌で歯を押し出したり(弄舌癖)、口周り以外では頬杖なども指摘されています。悪習癖の影響は様々なかたちであらわれますし、それぞれ影響の与える部位や規模が異なりますが、いずれにしても放置することでいいことはないと思って良いでしょう。
③呼吸環境 … 子どもの顎関節症の原因の意外な接点として、呼吸環境の悪さがあります。ここでいう呼吸環境の悪さとは、鼻呼吸の代わりに口呼吸をしたほうが楽な場合だったり、舌の位置の関係から喉の気道が狭いことなどを指します。これらは密接に関係していて、口呼吸が続くと口の中に空気の通り道を作るために舌の位置が下がります。これを低位舌といいます。さらに舌は奥(喉の方向)にも引っ込んでいきますので、結果として気道を狭めること(気道狭窄)になります。それをなんとかして気道を広げようと無意識的にする行動が頭を前に出す姿勢の変化に現れます。いわゆる猫背であったりストレートネックといわれる姿勢です。その姿勢のように顔を前に出すと、下顎骨にくっついている筋肉がはからずも元の位置に戻そうと引っ張ってしまいます。それが顎関節を圧迫することに繋がり、最終的には顎関節症になるとされています。
次に、上記の原因に対する対応や対策、治療法についてお話していきます。
①顎の成長 … 先述のとおり、自然消退することが多いのでそれを経過観察します。もちろん、顎関節症の発症原因が他に考えられないか、本当に顎の成長によるものなのかどうか鑑別する必要はあります。
②悪習癖 … まずは意識できる範囲でそれらの習慣をやめるように指導していきます。指導のみで悪習癖の除去ができればそれで良いのですが、大抵の場合はそれだけではなく子どもに対して何らかの積極的なアプローチ(指に指サックをつけたり、習癖除去装置をセットしたり)をしていく必要があります。一朝一夕での達成は難しいところです。
③呼吸環境 … 呼吸環境の改善こそ、子どもの頃にしかアプローチできないものといっても過言では無いでしょう。なぜなら、成長発育の過程で呼吸環境(顎や頭蓋や舌など)が発達していくことで形成されていくからです。理想的な顎や顔面の発育を経ることによって、上記のような口呼吸や低位舌、さらにそれによる姿勢の変化や気道狭窄を予防しやすくなります。こういった環境を獲得する手助けとしてRAMPA治療というものがあります。RAMPA治療は歯に装置を装着し、ヘッドギアも用いるので歯並び矯正と思われがちですが、コンセプトが異なります。RAMPA治療は「理想的な歯並びの獲得」ではなく「理想的な顎顔面の成長」に重きをおいている点が特徴なのです。
あてはまる、思い当たることがあったら、まずは当院での相談からいかがでしょうか。
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