食いしばりと歯の痛みについて
投稿日:2023年5月30日
カテゴリ:歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしり食いしばりが常習化すると、歯に過負荷が常にかかっている状態になります。そうなると、歯に様々な症状が生じてきます。今回はそのトラブルのなかでも、歯ぎしり食いしばりによって生じる歯の痛みのトラブルについてお話したいと思います。
まずはじめに、歯ぎしり食いしばりが原因で生じる歯の痛みの原因を挙げてみましょう。
①知覚過敏 … おそらくこれが主に発生する症状であると思います。今まで問題なかったはずの冷たいものや温かいものでしみたり、硬い食べ物を噛んだときに響く感じで痛んだりしますが、こういった過負荷がなくなると症状が消えたり軽くなったりします。しみる病状が安定しない不定愁訴気味になるのも特徴かもしれません。
②歯の楔状欠損 … 歯ぎしり食いしばりによって歯が揺さぶられ続けると、歯と歯茎の際の部分が欠けてしまっているさまが、楔を打ち込まれた様な形になることから「楔状欠損」といいます。その部位は刺激に敏感な層(象牙質)が露出している状態ですので、虫歯のようにしみやすくなります。場合によっては無症状で経過していることもあります。
③歯の破折 … 過大な力が原因で歯にヒビが入ったり割れたり欠けたりすると、その部位がしみたり、噛んだときに痛みが生じたりします。割れ方が酷い場合は何もしなくても痛むこともあります。破折に由来する痛みは激しい場合が多いです。
④歯の神経の炎症 … 過度な力が歯に対して慢性的にかかり続けると、歯の神経が突然炎症をおこして強い痛みを引き起こして「歯髄炎」とよばれる症状に発展したり、歯の神経が前触れ無く死んでしまう「歯髄壊死」という状況を引き起こしてしまうことがあります。いずれにしても、噛んだときに痛んだり、冷たいもの温かいものともにしみたり、拍動痛といって脈拍に合わせて痛むような感じがしたりします。
次にこれらの治療法について説明します。
①知覚過敏 … 軽度である場合、歯の表面にしみ止め作用のある薬剤を塗布するのが有効です。数回薬剤を表面に塗っていくと徐々に症状が消退していきます。症状が強い場合は同意を得た上で抜髄処置(歯の神経を取る処置)を行うこともあります。
②歯の楔状欠損 … 欠けてしまったところを補うように詰め物をする方法が一般的です。しかし、歯ぎしり食いしばりによる力が詰め物をたわませてしまい、取れてしまうことがあります。なお、無症状であれば何もせずに経過観察することもあります。
③歯の破折 … 欠けた部位や大きさ、亀裂の深さなどによって対処法が異なります。詰め物や被せ物で補ったり、歯の神経を取る必要があったり、酷い場合は保存できず抜歯しなければならないこともあります。詳しくはこの記事にまとめてありますので御覧いただければと思います。
④歯の神経の炎症 … 「歯髄炎」「歯髄壊死」のいずれの場合であっても歯の神経を取る処置(抜髄処置)を行う必要があります。それを経た後、その歯には被せ物をして治療を終えるようにします。症状が軽度な場合は、噛み合わせをチェックしたり経過観察をして様子を見ることがあります。
①~④の処置は、保険で作成可能なナイトガードというマウスピースを作成し、しばらく使用していただくことを併行することがあります。
もちろん、これらの治療を終えて除痛ができたあと、歯ぎしり食いしばりに対しての治療を行っていくことが望ましいです。そうしなければ、歯ぎしり食いしばりが原因で治療した部位の症状が再発する可能性があります。また詰め物や被せ物をした場合であれば、それらが脱離するトラブルが生じたりします。歯ぎしり食いしばりは歯を破壊するだけでなく治療した部位や詰め物や被せ物をも破壊してしまいます。
ちなみに歯は刺激に対して「痛み」でしか知覚できないため、当然のことながら原因の特定には診査が必須です。痛みが続いたり、増悪してくるようであれば早期の受診をおすすめします。
最後に、何度も痛みが出たり消えたりする歯があったり、しばしば歯が少しずつ欠けているような自覚があったりする方は、今回紹介させていただいた歯の痛みが出る可能性がありますので、当院での相談からいかがでしょうか。
■ 他の記事を読む■